風力発電を考える

新聞各紙 その他の報道で伝えられているとおり、各地の風力発電所周辺で、頭痛・不眠などの体調不良を訴える住民が相次いでいる。愛知県田原市・同 豊橋市、愛媛県伊方町、静岡県東伊豆町、兵庫県南あわじ市など、特に住宅地からほんの数百mの所に風車が並ぶ所で、少なくとも70人以上が、苦悩の日々を送っている という。

これは、巨大風車から発生する 周波数100Hz以下の低周波音によるものと推定され、以前から、工場のボイラーや 冷暖房機などに隣接する住民が被害を訴えるケースが報告されているが、風力発電所周辺では、これらは “風車病”とまで呼ばれ、欧米でも多くの人々が苦しんでいると環境省も、ようやく 風車と体調不良の関係をめぐる海外情報の収集や、風車の一部で低周波音の測定を始めたそうであるが、因果関係の証明は難しい という見解のようである。

巨大風車がもたらす風力発電への逆風

さて、地球高温化を伴わない新エネルギーとして期待される風力発電には、とんだ逆風である。
が、その逆風のモトは、ほかならぬ 巨大風車自身にあるのではないだろうか?
発電機の載る塔が約60m。高くそびえる塔に載せられた 重く大きな発電機は、塔を介してかなりの振動を周囲に撒き散らすことであろう。ブレードも約40m。これだけの長大さでは、風切り音が出にくい形状(最近の扇風機や 換気扇にみられる あのカタチ がそうした形状 といわれる。)で 造られることなど まず期待できないであろう。
そして、その巨大さは、どこに造っても 景観を損なう、建設用/保守用道路も大きくなって 周辺の大規模な環境破壊を伴う 、という問題もあって、これに“風車病”が加われば、風力発電に良いイメージは持てないのではないのだろうか。

そんな巨大風車。現在 全国で約1500基、総発電容量は185万kw というものの、稼働率は1~3割と言われている(55万kw)ので、実質50万kw程度であろう。各地で景観を散々ブチ壊し、そこらじゅうに低周波を撒き散らしておきながら、水力発電所ほんの数ヶ所分にすぎないのである。
※ちなみに黒部ダムだけで45万kw前後、全国の風車を全部集めてもせいぜい黒部ダム一つ分にしかならない!!

コンパクトな 風力発電+太陽光発電の“地産地消”

たとえ発電量が乏しくても、風力発電が自然エネルギー発電として注目されるのは事実であろう。その大きさの割に効率が良くなく、発電量が不安定なところは、太陽光発電 と相通じているようである。ところで この両者、一方が発電する時間帯に、もう一方が休止状態である。これにバッテリーを組み合わせれば、家庭用補助電源 として生かせるのではないだろうか。太陽電池と違い、かなり安上がりな風力発電機は、むしろコンパクトなものを都会で使うべきものではないのだろうか。何も どでかいモノを人里離れたトコロに造って、これまた景観ブチ壊しの送電鉄塔を林立させずとも、チョットしたものを実際使うそばに置く、風ならビル風があるじゃないか。そう考えるのは、筆者だけではない、と思うのである。

(Text まっど山本)

This article has 1 comment

  1. 「全国の風車を全部集めてもせいぜい黒部ダム一つ分・・・」
    何と言うエネルギー効率の悪さ!。正直に驚きましたよ~!。
    多分、これに遠隔地へ送電するための電気抵抗によるロスを、
    換算すると、もっと発電効率は悪くなるんでしょう~(苦笑)。
    技術屋の端くれとして、悲しくなるばかりです・・・。

    コンパクトな発電装置によるローカルエネルギーを、バッテリー
    に蓄電して、電気は必要な時に交流に変換して使うって方法、
    まだまだ日本国内では認知度が低く、疑問視する声も多いのが
    実情なんですが、インバータ制御技術の発達した現在ならば、
    電力の変換ロスも少なく、十分に実用可能な方法です。