先日1月30日の日曜日、ナラ枯れの広がる犬山市で、「ナラ枯れと身近な森の管理」をテーマに、シンポジウムが開かれた。
ナラ枯れのメカニズムが解き明かされ、ナラ枯れの拡がりつつある山の現場で、私たちが何をしてはいけないか、どうすればいいかについて、科学的な論拠が与えられたことは、私たちにとって大きな成果だった。
このような科学者たちの基礎研究があればこそ、私たちも安心し、自信を持って山に取り組めると実感できた一日だった。
ただ会場には、研究者も行政も市民も含めて、薪炭林の再生回復に努めようとしている人たちは見当たらず、さらに議論を深めることができなかったのは、残念だった。
私たちが、管理し、運営し、保全と再生、更新を図っている、放置されたままの、かつての薪炭林や、学校林、スギやヒノキの人工林から遷移しつつある二次林では、豊田市内の一部の山林以外では、未だナラ枯れは発生していないが、私たちの方針と手法は、既に確立している。
ナラ枯れが発生している山からは、被害木は早い時期に伐採する。枯死していないものも、さらに被害が拡大拡散しないために、また山林の更新を促進する意味からも、伐採する。
とりわけ被害木は、決して現場から搬出しない。
現場でふたつの方法で、余すことなく利活用する。
ひとつは、炭に焼くことであり、もうひとつは、シイタケのほだ木にして、2年後の愉しみを待つことにしている。
私たちの病虫害に対する姿勢や態度、対応は、「田んぼの生きもの調査」の提唱以来、何も変わっていない。
虫に、益虫も害虫もいない。
私たち人間にとって都合がいいか、都合が悪いかという区別はあるとしても、それは大自然の大きな流れの中では、人間が自然に与え続けているダメージに比べれば、ごくささやかなものにすぎない。
私たちにとって都合が悪いとすれば、彼らとの折り合いをどうするかに最善を尽くすのが、私たちの流儀であり作法だということに変わりはない。
今回のシンポジウムで、私たちの現在採っている対応策が、理論的にも間違っていないことを確認できたのは、収穫だった。
さらに一歩踏み込んだ研究と、現場からの生の報告のシンポジウムに発展することを期待したい。